みそソムリエ・小野敬子さんにインタビュー

みそソムリエ・小野敬子さんにインタビュー

私たち日本人の食卓に欠かせないお味噌。
味噌汁をはじめ、様々な料理に使われ、食べるとホッとした気持ちになりますよね。
「味噌は医者いらず」という言葉もあるように、味噌には栄養がたっぷりで、何より美味しい!

 

今回は、そんな味噌のソムリエとして、味噌を手作りする楽しさや美味しさを伝えたりレシピ考案などを行なっている、みそソムリエの小野敬子さんにインタビューしました。

みそソムリエにインタビュー

——活動を始められたきっかけは何ですか?
姉のアレルギーがきっかけです。それまでは姉も私もパンやパスタ、ラーメンが大好きで、それらがあれば生きていけると思っていましたが、姉は食べられなくなってしまった。そこで食生活を見直したんです。

 

その頃、塩麹が体に良いと聞き、糀(こうじ)を使ってみようということで私の地元にある井上糀店に行き、そこで「糀」に出会いました。

——もともと味噌が好きだったのですか?

いえ、それまでは味噌が好きではなくて、味噌汁は具だけ食べて汁は残す子供でした。それは大人になってからも・・・。味噌は体にいいと聞いても興味がなくて。

 

——それが一変したのですね。味噌のどんなところに魅せられたのですか?

何といっても、「美味しい」ところです!初めて井上糀店に行った時に食べた味噌の美味しさに驚きました。
食べた時の景色まで思い出せるほど、衝撃を受けたんです。

 

——味噌を作り始めたきっかけは何ですか?

井上糀店の味噌を買って帰ろうとしたら、お店の方に、「うちの味噌を作って食べてごらん」と半ば強制的に乾燥大豆と糀・塩のセットを買うことに(笑)。家に帰って自分で味噌を作り、発酵させて半年後。自分で作った味噌を食べてみたらその美味しさにまたびっくり。

 

どうやら「糀」というものが美味しい作用をしているらしいと気づき、「糀って何ですか?」と、再び糀店に行きました。

そこから井上糀店の糀を作るお手伝いをすることになったんです。
どんどんハマっていき、「味噌作りをもっとみんなに知らせた方が良いよ」と思うようになりました。

 

私自身、味噌は買うものだと思っていて作ったことなんてなかったし、無くても生きていけると思っていた。そんなかつての私のような人が沢山いるかもしれないけれど、「味噌を無くしたら絶対にいけない」、と使命感のようなものを抱いて、「もっと広めたい、もっとやりたい!」と思うようになりました。
そして糀店の方に背中を押していただき、出張でワークショップを開始したんです。

 

味噌って身近だけれど、「作れる」ということを知らない人も多いので、「味噌って簡単に作れるんだ」っていうことを知ってもらいたいです。

——井上糀店について教えてください。

井上糀店はほぼ家族経営で現社長は5代目。歴史は長くてもうすぐ150年です。

 

糀店という名前がついているのは、もともとお客様からお預かりしたお米を「糀」に加工してお戻しするのが生業だったためです。昔、井上糀店のある地域は多くが兼業農家で、みんな自分の家に田んぼ・畑があって、だいたい自給自足ができていました。

 

自分の田んぼでとれたお米や大豆・麦を糀屋さんに出し、戻ってきたものを自分の家でお味噌にする、というのが当たり前だったそうです。

 

その後時代は変わり、皆さん田畑を手放して家庭でお味噌を作らなくなったので、井上糀店では糀に加工するだけでなく、お味噌を作りはじめたんです。なので、糀店でお味噌を作りはじめてまだ50年くらいです。

 

社長も手作りの味噌をたくさんの人に食べてもらいたいと思っていて、味噌を売りたいというよりも、「手作りするという体験」を重視してます。

 

——今後どうしていきたいですか?

食育としてやっていきたいです。
私は味噌を広めたいというより、味噌が体のことを考える「きっかけ」になれば良いな、と思って活動しています。

 

私たちは食べるものでできていること、自分が何からできているのか、そういうことを考えるきっかけに味噌がなれば良いなと思っています。

 

子供達と味噌作りをするのもすごく好きなので、今は小学校や保育園、幼稚園にも依頼があれば行っています。それから、子供達の親世代にも味噌をもっと知ってもらいたいと思っています。

 

——最後に、自分らしく生きるコツを教えてください。

私自身のことで言えば、味噌という自分がはまれるものに出会えたのはありがたいです。子供がいるので、自分が好きなことをしているところを見てほしいというのがありました。子供に「ママ楽しそう」と言われた時は良かったなと思いました。

 

今の時代ってなんでも受け入れてくれるのだから、やりたいことがあれば、まずはやってみたら良いと思います。
どうしようかと悩むのはもったいない。迷ったら、やるかやらないかの「0か100か」だけじゃなくて、「ちょっとだけやる」とか「結構やる」とか・・・そういうバランスも自分で決められる。だから、まずは「ちょっとだけ」やってみたら良いと思います。

 

プロフィール

みそソムリエ 小野敬子さん

2012年に味噌作りを学びはじめ、2013年にみそソムリエに。現在、味噌作りの出張ワークショップを開催。味噌を手作りする楽しさや美味しさを伝えている。他に、ケータリングやレシピ考案など味噌や糀に関わる活動を行なっている。
渋谷駅近く「AND THE KITCHEN」にて味噌や糀をたくさん使ったお弁当を販売中。
みそソムリエ敬子さんのサイト:http://misokeiko.com/

 

(取材・文章 松永優花/撮影 みやもとあい)