会社員から農家へ転身〜宮島草子さんインタビュー〜

会社員から農家へ転身〜宮島草子さんインタビュー〜

私たちは、私たちが食べたものでできている!

昨日までの自分と今日の自分は、一見何も変わっていないように見えるけれど、私たちが日々食べているものの影響を確かに受けています。

「食べること」は毎日のことですから、自分の納得のいくものを選んで心身ともに健康で幸せな毎日を過ごしたいですね!

お話を伺ったのは・・・

自身の食物アレルギーがきっかけとなり、会社員から野菜と米粉のカフェの経営を経て、現在は農業をされている宮島草子さん。「津久井在来大豆」発祥の地、相模原市千木良で在来大豆を自然栽培で育てています。
彼女の畑「草子農園」は、週末になると「援農」(農作業の手伝い)に訪れる人で賑わいます。毎週のように訪れる方も多く、取材の日もみんなで和気あいあいと作業をしていました。

 

もともとは会社員、現在は農業をされている草子さん。農業を始められたきっかけについて伺うと、

「自分自身のアレルギーがきっかけです。16年くらい前から小麦・大豆・果物のアレルギーになり、それまで食べていたものが食べられなくなってしまった。会社員として働いていましたが、誰とも食事に行けないし、人と接するのが嫌になってしまうほどに。

自分が食べられるものを自分で探さないといけなくなり、小麦に代わるものを初めはネットから探し、そして実際に探す旅にも行きました。米粉の製粉会社や石垣島の塩屋さんに行ってみたり、調味料を見直したりしたことで、だんだん世界が広がっていきました。その頃からかな、お店をやろうと思ったんです。」

その後、2010年から2年間、米粉と野菜のカフェをオープンされたのですね。

「はい。お友達の弟さんが農家さんだったので、その方から野菜を買っていたのですが、いつも旬の野菜をたくさん届けてくれて。

届いた野菜を見てからメニューを決めていました。なので、いつもメニューは日替わりランチが1つと米粉シチューやグラタン、米粉のスイーツ、というお店でした。

カフェをやっていると、自分と同じようにアレルギーの人たちがたくさんいるんだと知りました。そうした人たちが家族の中で一人だけ別の物を食べるのではなく、みんなで同じものを食べられたら良いなという気持ちでやっていました。」

その後、農業を始められたのですね。「農家をやろう」と思うのは一大決心なのではと思うのですが、どうして始められたのですか?

「農業をやろうと思ったというより、農家さんから届く野菜の新鮮さと美味しさはスーパーの野菜と何が違うのか?が気になり、単純に自分で野菜を作ってみたくなったんです。それで畑で野菜を作り始めました。

カフェをやっていた頃からブログをやっているのですが、そのブログに畑を始めた様子をそのままアップしていたら、それを見た方たちがどんどん畑に遊びに来るように(笑)。そんなこともあって、相模原市から農家認定を受けることができ、幸運なことに農家になれたという感じです。」

そうなのですね。それにしても、ブログを見て多くの方が遊びにくるなんて、草子さんのお人柄だなと感じます。農業に転身されてから、これまでいかがでしたか?

「それまで農業をやったことがなかったので、最初は地主さんに教えていただきながらやっていて、その後少しずつ自分なりにも探し始めました。

肥料を入れないでできる方法はないかと、色々な本を読みましたが、当時あまり自然栽培の方法についての情報がなくて。そんな中、農家さんのお友達が少しずつ増えてくる中で大豆をやっている友達ができ、「津久井在来大豆」を譲っていただいたんです。千木良(ちぎら)という発祥の地の名前のついた大豆なんです。」

今、畑で作られているものは?

「メインは津久井大豆です。それと、野菜を30種類くらいやっています。
野菜に関しては、「研究畑」として、どこまで肥料を入れないで自然の状態で野菜ができるのか、をみんなで研究しているんです。

「タネを採ってタネをつなげる」っていうことをしたいなあと思ってやっています。

自給自足とまではいかないかもしれませんが、味噌と醤油も作っていますし、お友達の菜種油などもあります。全国で頑張っている農家さんのお友達も増えてきているのも嬉しいです。」

草子農園の、肥料を全く入れていないお野菜を私もいただきましたが、味が濃くハッとする美味しさでした。

会社員から農家さんへの転身をされたわけですが、ご自身は農家さんに向いていたと思われますか?

「向いているのかどうかはわからないけれど(笑)、これまで無我夢中でやってきました。結果的には楽しくて、やりたいことをして生きているので、ありがたいと思います。

農家を始めて、「土に生かされている」っていうのが本当にわかりました。

アレルギーを持つ体になってしまったから仕方ないので、自分で作れるものは作る。でも一人ではできないから、発信して、共感してくれる人に集まってもらって。そんな風に、みんなで作って一緒にやっているんです。」

 

「みんなで」とおっしゃる草子さん、取材当日も皆さんが都内など各地から集まり、畑作業をしました。お昼には畑で採れた新鮮な野菜を使った料理を食卓を囲んで食べ、楽しい時間を過ごします。

そんな草子さんに今後どうしていきたいか聞いてみると、

「みんなが少しでも作物を作る感覚とか行動を持ってほしいなと思います。それが嫌々ではなくて、楽しんでできるような・・・。そういう場に私の畑をしていきたいと思います。いつでも来ていただいて、これからもみんなで作っていきたいですね。」

 

▲畑で採れた野菜は栄養満点!とっても美味しい!

▲お醤油も手作りされています

〜お話を伺って〜

お友達の農家さんにいただいた大豆をつなげて、現在も大豆をメインでやられており、まさに「タネをつなげる」を日々実践されている草子さん。

普段土に触れていないと忘れてしまいがちですが、草子さんの畑にいると「土に生かされている」という実感が湧いてきます。

 

週末には多くの人が訪れる草子さんの畑。自然に囲まれた場所で土を触ったり、草子さんや皆さんの人柄に触れて元気が出るパワースポットのような場所だと感じました。

草子さん、ありがとうございました!

 

 

(取材・文章 松永優花/撮影 みやもとあい)